NATURE & CULTURE
Understanding environment through culture, UEHIRO×WASEDA Seminar series

フィールドワークに魅せられて

松村雄太

イオン環境財団によるプログラムであるASEP(Asian Students Environment Platform)でお世話になった、吉川先生が早稲田で授業をされるということで、この授業の存在を知りました。私は昨今の環境問題から、持続可能な人間のあり方に関心があり、それを文化的なアプローチから学ぶことができるこの授業の内容に非常に興味を持ちました。大学卒業間近のこの時期だからこそ、今後はなかなか触れる機会がないかもしれない、自分のしたい勉強をしたいと強く思い、受講を決めました。

受講を決めた段階では、何度もフィールドワークに行ける授業だとは知りませんでしたが、私の場合は実際に小川町と道東で活動できました。このような機会を与えてくださった上廣倫理財団様に、心より感謝申し上げます。机上での勉強ももちろん大切ですが、実地に赴いてその場の空気を五感で感じ、学ぶことのできるフィールドワークが元来好きで、大きな重要性を感じている私にとって、非常に貴重な経験となりました。所属学部での授業やオープン科目等、今まで様々な授業を受講しましたが、ここまで実りの多かった授業はなかったと、自信を持って言えます。

小川町でのフィールドワークは、早稲田への国費留学生と一緒で、彼らの国際的な視点とともに、日本最先端の有機農業に触れることができ、非常に密度の濃いものとなりました。金子さんの農園では、単に有機農業をしているだけでなく、枝豆を取り終えた枝を牛の餌としたり、糞尿を堆肥にしたり、そこから発生するガスを利用したりと、循環的な一つの社会が成り立っていることに感銘を受けました。使用済み天ぷら油を車の燃料にしたり、自家発電したりと、文明社会の巨大なシステムに頼っていませんでした。そういった素晴らしい技術が広まらない理由を、金子さんが既得権益との関係などとともに語っておられ、その通りであれば、日本はまだまだ環境後進国だと思いました。有吉佐和子さんの『複合汚染』を読んだ時にも感じたことですが、官民一体となって取り組んでいかなければならないことなのに、大きな国家システムの既得権益の元で、経済的・環境的に素晴らしく合理的な方法も、潰されてしまうことに非常に失望しました。もちろん、特定の人が言っていることを全て間に受けてしまう危険性は認識しているつもりですが、彼らの言っていることを信じるに足る根拠は、日々生き、学んでいる中で感じることでもあります。国家を動かす方々には、もう少し柔軟な頭の使い方をし、国民のためを思って政策を行っていただきたいと心から思います。日本の歴史上で言えば、江戸時代のようなリサイクル社会は一つの成功例で、金子さんはそういった、経済的・環境的に合理的な道の継承者なのではないかと思いました。

道東のフィールドワークでは、夏にASEPで訪れた虹別コロカムイの会を再訪しました。雪が寒風に吹き荒れる中、厳しい自然の中で生業を営む方々に頭が下がる思いでした。夏に彼の地を訪れた際に見た北の大地は白く厳しく形相を変え、同じ地へ違う時期に訪れる意義を感じました。フィールドワークの一つの目的であるコロカムイの会の忘年会への参加は、シマフクロウのために長年活動されてきた方々と胸襟を開いて語り合える、非常に良い機会でした。講演を聴くこともいいですが、あのようなカジュアルな場で、その地の料理や酒という「文化」に舌鼓を打ち、心置きなく様々な角度からお話を伺うことができました。フィールドワークとは文字通り野外で活動するものだ、というような認識があった私にとって、フィールドワークの概念を広げるという意味でも良い時間でした。

同じく夏に訪れた、アイヌの秋辺さんを再訪しに、阿寒湖アイヌコタンを訪れました。実際に劇場を案内していただきながら、彼の思いや世界観を聴くことができ、興味深かったです。その際私は、現在北海道大学に留学しているベトナム人の友人に通訳や説明をしたのですが、ある程度役目を果たせたという自信はついたものの、日本語では理解できても英語では表現しきれなかった部分も多く、日本文化(この場合はアイヌ文化といった方が適切ですが)を海外に発信していくことの難しさを改めて感じ、通訳案内士の役割の重要さも再確認しました。

この授業はコンテンツの充実度もさながら、授業外でも仲良くできる方々と出会えたことも大きな収穫です。いつもお世話になっている先生方をはじめ、様々な学部学年のクラスメートとは、過ごす時間も比較的長かったこともあり、多くのことを語り合い、ともに経験することができました。将来、この授業のテーマに関連することを行う際 には、彼らとともに取り組んでいきたいと思います。同じような興味関心を持つユニークな人々に出会うことができるプラットフォーム、あるいはコミュニティーとしても、この授業の果たす役割の大きさを実感しています。最後になりますが、このような素晴らしい機会をくださったみなさまに、心より感謝を申し上げますとともに、いただいたご恩を社会に還元していくという形で返していこうと思います。ありがとうございました。

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