NATURE & CULTURE
Understanding environment through culture, UEHIRO×WASEDA Seminar series

「文化から環境を考える」授業を通して得た気づきと学び

森反 翠

この授業を選んだのにはそもそも3つ理由がありました。1つは授業名が新鮮で面白かったということです。“文化と環境”。どちらも人間の生活に欠かせない身近なものであり、その繋がりを考えるのは人間自身を考える事かと思います。2つ目の理由はフィールドワークが多いということでした。この授業の前にはフィールドワーク経験が無かったのですがそうした授業形態には何か惹かれるものがありました。最後の理由は授業が留学センター提供によるもので、英語で行われるという点でした。留学生もおそらく多いだろうし、これなら私も積極的に英語を話せるだろうと思っていました。この点に関してのみ想像とは違っていましたが、結果的に様々な学部学年の個性的なメンバーと出会えてとても充実していました。この授業は今まで私が早稲田で受けてきた授業の中でも非常に面白く、履修して良かったと心から思います。吉川先生の通常講義は自由な雰囲気やテーマが魅力的でしたし、何よりも3回のフィールドワークを通して私の中で沢山の気づきや発見があり、その気づきを基に自分なりに考えを深める事が出来ました。以下に気づきや感じたことを順に述べます。

最初に伺った金子さんのもとではTEIKEIという新しい販売方法と有機農法へのこだわりについて学びましたが彼の農業へかける思いや信念は、実際にお会いして生活を見た(実際に天麩羅の油で動かす車に同乗させていただいた)からこそ身をもって感じることができました。金子さんが言われた“農業は大地に描く芸術だ”という言葉の意味を今ならば心で理解できます。正直に告白するとそれまでの私は農業に対して単純作業の力仕事というイメージを持っていました。しかし金子さんや福島の葡萄農家に伺って農業は単純作業でないどころか、とても緻密で繊細な技術と豊富な知識が必要なものだと気付き、私が以前いだいていたイメージが浅はかで農業の本質を見ていなかったことは言うまでもありません。この思考の背景には私自身が農業と継続的に本気で接する機会があまり無かった事が関係していると思います。自分のいだいているイメージはどこから生まれたもので、はたして本当に正しいのか?という問いを持ちながら、イメージにとらわれない実態を人任せではなく自ら探る大切さを痛感しました。

また今回のフィールドワークでお話を伺った方々はそれぞれ、大地やシマフクロウや葡萄といった“自然”を相手に仕事をされていて、その仕事内容や醍醐味を聞きながら、自然や野生動物を相手にすることの難しさを感じました。しかし人の言葉を話せない相手からでも、彼らは何かしらのメッセージを言葉以外の方法で受け取っていて、その道を究められていました。またお会いした方々はそれぞれの仕事や自分の生き方に誇りと自信を持っていて、何よりも仕事で向き合う対象(大地、シマフクロウ、福島)を愛していてそれらを守りたいという使命感を持っていると肌で感じました。好きなことに人生を懸けて追究している人達の目の輝きは一段と強かったです。私はこれから就職を控えていますがその仕事や向き合う対象を愛せるような職業を選びたいです。

何を好きとなるか?は十人十色ですが、その背景には2つのものがあると思います。一つは生育環境です。会社を退職して福島でブドウ栽培を始めた方の原点には家に植わっていた山ぶどうの木の思い出があると伺いました。どこで、何を見て、誰のそばで、何を食べて育ったかといった事が自分でも気付かないうちに自分を形作るのではないでしょうか。だからこそ未来を任せる次の世代にどのような教育を受けさせるかはとても重要だと思います。シマフクロウがいつまでも住み続けられる森を作り続けるために、コロカムイの会では地元の学校と提携して環境教育を行っていますがこのような活動のもたらす影響は非常に大きいと感じます。何を好きになるかの背景の二つ目は、ずばり感性だと考えています。感性は生まれもったものなのかもしれないし、後天的に生育環境等から育まれるものかもしれない。その正体はよくわかりませんが、感性とは他人によって無理に変えられる軟弱なものではなく、本能や勘に近いものである気がします。

この授業を通して以上のような様々な側面についての気づきがあり、その気づきを基に考えるという新たなスタイルの学びの経験は私にとってとても意義があるものでした。講義形式で人から話を聞いて頭で分かるという事と、フィールドワークやインタビュー、会話を主体的に行って五感を存分に使いながら心で理解するのでは、踏んでいるステップやかけている時間はもちろん大幅に違うし、自分の中に残る学びの質や量もかなり異なると実感しました。最後になりましたがご支援、ご協力本当にありがとうございました。

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