NATURE & CULTURE
Understanding environment through culture, UEHIRO×WASEDA Seminar series

『文化から環境を考える』を受講して

吉澤 李菜子

この授業を受講する前、私は農業や環境について専門的に学んだことがほとんどありませんでした。しかし、最初の講義で有機農業の可能性を知ったことにより、人と自然とのかかわり方について、かねてから疑問に思っていたことの手がかりが得られるのではないかと考えました。今、フィールドワークや講義を振り返ってみて、もちろんすべてではないけど、少し解決の糸口が見えてきたように思います。

私の専門は、国際政治や国際経済で、平和構築や貧困撲滅の領域に強い関心があります。その分野を学んでいく中で、自分の中にはいつも、「今紛争や貧困で苦しんでいる地域もいつかは開発され、都市化が進んでいくだろう。そうすれば、高齢化や第1次産業の衰退、環境破壊といったような問題も浮上してくるのではないか。日本でもまだそのような課題は解決されておらず、このまま同じような課題を抱える国が増えていったら、世界はどうなってしまうんだろう」という漠然とした疑問がありました。そこで、この授業を通して自分なりに考えたいテーマを「持続可能な都市と自然、環境のありかた」と設定することに決めました。

そのテーマについて、まず一番参考になったのは埼玉県小川町でのフィールドワークでした。農家の金子美登さんに質問をする機会があったとき、私は以下のような疑問をぶつけました。

「小川町で取り組まれているような循環型の生活は素晴らしいと思うし、理想だと思う。しかし、実際に東京のような都市で暮らしている人々にとっては食やエネルギーを自給することは難しい。その場合はどういう形が理想だと考えていますか。」

この質問をした時に私の頭にあった選択肢は、今の都市生活はかなり自然に負荷がかかるからできるだけ縮小する方向にもっていくか、都市はしょうがないので目をつぶるくらいかのどちらかでした。どちらも非現実的で、根本的な解決になっていないと思っていたので、金子さんであればどのように考えるかにすごく興味がありました。実際の金子さんの答えは以下のような趣旨のもので、やはり期待通り、自分だけでは思いつかないような発想でした。

「都市の住民であれば、一番近い農村と提携して、そこで食やエネルギーを地産地消すればよい。都市は都市、農村は農村と分けるのではなくて、都市と農村が互いにひらいて、新たな共同体を創ればよい。」

都市も農村もどちらも人々が生きていくには必要です。今の日本社会は、都市を重視しすぎてきたような気がします。またその反動のような形で、農村の生活を礼賛してみる風潮も見られ、現実的な方向性が定まっていないように感じていました。そんな中、金子さんの、都市と農村で新たな共同体を創るという考え方は、私にとってとても新鮮で、かつ実効性の高い案だという風に考えました。

では、そのような共同体を創る際に必要になってくるのは何かということを考えると、行政などではなくて、その地域の住民の力ではないかという考えに行き着きました。その地域住民の課題解決のありかたを考えるにあたっては、北海道の標茶でのフィールドワークが最も参考になりました。

標茶では、絶滅危惧種のシマフクロウを保護する虹別コロカムイの会の方から話を聞いたり、取組みを見学させていただいたり、忘年会に参加させていただいたりしました。そこで一番に思ったことは、この会では驚くほど住民自発型の活動がなされているなということでした。私は今、とあるNGOでインターンをしているのですが、そこでの学びから、ボランティアを続けることや地域の人が中心になって課題を解決することのむずかしさ、大切さを痛感していたので、コロカムイの会のありかたはモデルケースになるくらいうまくいっているのではないかと感じました。

もちろん外部の目から見てなので違う部分もあるかもしれませんが、コロカムイの会は、①参加者が楽しみながら、できる範囲で自分の地域の活動をしている②行政(環境省)との関係もうまくいっている③取組みが教育などの形で地域に還元されているという点で素晴らしいと考えました。もちろん、外部から見えない部分も含めて、課題もたくさんあるとは思いますが、コロカムイの会という存在を知ることができ、そこにかかわる方のお話を聞けたのはとても良い経験になったと思います。

このように、小川町と北海道、2つの土地でのフィールドワークでは、今までにない考え方をする人々や自分とは全く違う生活を送る方々と出会うことができて、当初抱いていた自分の中の疑問を解決に導く手がかりをたくさんつかむことができました。まだはっきりと形になっていない部分も多いけれど、今回の講義、フィールドワークを通して見聞きしたこと、感じたこと、考えたことは自分の核になる予感がしています。

フィールドワークに関して、少し改善点を上げるとすれば、もう少し学生が自主性をもってフィールドワークの行程を決められる部分があるといいかなと思いました。現実的にはなかなか難しいかもしれませんが、全体の行程のほんの1部分でいいので、学生自身でどこに行って誰の話を聴くか、何をするかを決められるのがあれば、スタディツアーのような形でなう、それぞれが主体性をもって取り組むフィールドワークにできるかなと感じました。

もちろん、吉川先生の授業も、自分が今まで触れたことのない領域ばかりで、とても新鮮で面白かったです。特に農家としてではない自身の葛藤のお話が印象に残っています。また、キューバのお話はとっても楽しかったです。有機農業について、ここまできちんと体系的に学んだことがなかったので、とても興味深く、新鮮でした。

今後も、この授業を通して得たことをもっと発展できるように、幅広く学び、いろんな場所に行って、いろんな方と話すことをしていきたいと思っています。貴重な機会をいただき、本当にありがとうございました。

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