2018年講座の総括
2018年4月9日~2018年7月23日の期間、上廣倫理財団財団寄附講座「文化から環境を考える」を早稲田大学留学センター設置科目として開講しました。2回のフィールドワークを含む全15講座の内容および受講者のフィードバックについては報告書に記載の通りです。助成に深く感謝申し上げます。
今期が本講座の3期目の開講となりますが、今年度は①秋学期開講から春学期開講へ、②さらなる対話型、問題発見・解決型講義へ、③日本国内の大学における本講座の位置づけの明確化の上記3点を重点的に考え、講座を運営いたしました。
フィールドワークの度に、大きく成長してきた学生たちは、身体で動いて体験したことをグループワークで言語化するために最初は必至でしたが、最後は言いたいことがたくさんあるようでした。
気が付いたことを人に伝えたい、自らのアイデアを共有したい、といった深い共感性が生まれてくる背景には精神性と身体性の双方で自らの殻を破る勇気と他者との協働による優れた言語的・非言語的コミュニケーション・スキルの体得と多くの他者と弾力的な知性を磨いてきたという自信がありました。
ここでの知性とは必要な知識を持ち、試行し、アイデアを生み出す能力であり、常識を超えて考えるクロスボーダーな思考や、イノベーションを生み出す能力と密接に結びついています。
現在ほど、倫理・哲学にとって、本来の意味での「経済」、現在言われるところの「シェアリングエコノミー」と結びついている時代はありません。
「エシカル×場に根差した経済」という課題には、共感に根差した感受性、個に埋没しない道徳性が基盤になります。
この講座は「文化から環境を考える」という科目名ですが、課題解決のためのプロセスは、まさに「文化」を創造する行為でもあります。その解決策提示に際しては、しばしば思考継続の結果に伴う哲学の誕生も伴いました。
文化の基盤に根差し、同時に、新たに文化を創造することから環境問題の解決を考えるという枠組みは学生には非常に挑戦的でもあり、同時に、具体的に検討しようというモチベーションを引き上げる側面を有しているようです。
環境問題に対する「観察・インタビュー×フィールドワーク」=「場に根差した経済の構築」⇒文化の掘り起こし+文化の創造
という図式は今年度の講義で生まれたものです。
講義が進むにつれて、WEBサイト、SNSでの投稿を増していくことがイノベーティブな思考を引き出すためにもよい効果がありました。
講座として、こうした思考とフィールドワークのモデルが構築されその流れが出てきたところです。これは学生たちが自分たちで作り上げてくれたメソッドでありご支援の賜物です。日ごろから忍耐づよく見守ってくださり、共に考えてくださる貴財団のご支援があってこのようなメソッドが派生しつつあると実感しております。
本年度寄附講座開講にあたり財団の関係者のみなさまには多くの有益なご助言を頂戴いたしました。そして、講義にご参加いただき、受講者の発表に貴重なコメントを頂戴いたしました。ここにあらためて本年度の助成に深く感謝申し上げます。また、フィールドワーク地である鎌倉、奄美大島の関係者のみなさま、ゲストスピーカーのみなさま、講義時にコメントを寄せてくださったみなさま、本講座の関係者のみなさまにここに記して感謝の意を表します。ありがとうございました。
吉川成美 礒貝日月